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大山の山小屋

大山の山小屋

それは、高橋さんが20代の半ばの頃。
山の知人に頼まれて、鳥取県の大山の山小屋の番人をすることになったんだそうです。
季節はっていうと6月頃で。
やけにその時は気候が荒れてたそうで、山はいつも吹雪いている状態。だから誰も登ってこない。

もう何日も一人の生活が続いている。
日が落ちると辺りは真っ暗になるわけですよね。
もちろん電気なんかありませんからね。

それでそんな中たった一人で夕食の準備をし始めたんですよね。
近くには蝋燭を一本置いてね。
蝋燭以外の灯りはっていうと、自分の額のところにカンテラを付けているだけ。
灯りはたったその二つ。

わずかに自分の周囲が明るいだけなんですよね。
後は中も外も真っ暗なんですよ。

調理台の目の前には小さな覗き窓がある。
これはおおよそ縦が13cm、横が20cmくらい。
蓋がついていてそれを開けると支えがしてある。

そこから外を覗くんですがね、外の風景は黒一色なんですよね。何も見えない。
まさに漆黒の闇。

一人で携帯のコンロに火を付けて、覗き窓を少し開けて、調理台で夕食の支度をしていたんですね。

そのうちに、なんだか気配を感じたって言うんですね。
見上げるとちょうど目の前に調理窓がある。

その向こうには本当に暗い景色しか存在していないんだ。
その暗闇の中から何かが、だんだんだんだん近づいてくる気配がするって言うんですよ。
気配がわかる、そんなに小さなものではなさそうだ。
それがだんだんだんだんと近づいてくる気配がするって言うんですよね。

あれはなんだろうな?って思いながらも調理している。
でも気になる。



辺りはシーン…と静まり返っている。
またふっと窓の方を見上げた。
確かに何かが暗闇の中から近づいてくる気配。

長い間ずっと山で生活している方ですからね。
そういう勘が鋭いんでしょうね。
気配がわかる。

目には見えていないですが、確実に何かがだんだんだんだんとじぶんのほうに近づいてくる。
それが分かるっていうんですよ。

気にはなりますが、なおも調理台で食材を刻んでた。
そのうちに湯が湧いてきた。
その刻んだものを鍋に入れる。

すると突然、『入り口は何処ですか?』と女の声が聞こえたもんだからびっくりした。
そして顔をあげた。

すると、目の前の覗き窓に女がビタっと顔をつけてね、覗いてるって言うんですよね。
カンテラの灯りの中、色の白い女がジーっとこちらを覗いている。

ただ、窓が狭いから髪型は分からない。
顎から下も分からない。
ただ顔だけがビタっと窓にくっついてこちらを見ている。

それで、「あ、こちらですから」って言って右手で入り口を教えたっていうんですよね。
そうすると返事もしないで、女はサッと消えたっていうんです。

随分変わった女だな…とは思ったものの、ここのところずっと一人の生活が続いていますからね。
まぁ夕食くらい話し相手が居たほうが楽しいだろうと思ってね。

支度をしながら待っていたんですが、一向に入ってくる気配が無い。
おかしいな?どうしたんだろうと思って入り口を見ても、入り口は戸が閉まったまま。

あら?と思いながら戸を開けてみた。でもそこは相変わらず黒一色の闇。
もしもし?もしもし?と声をかけてみるが誰もいない。

少し先、30m先は崖になっている。
まさか、そんなところまでは行かないよな..と思っていても心配なんで、懐中電灯をもって外を走り回る。
おーい大丈夫か、おーい。おーい大丈夫かー!
って言いながら20分ぐらい走り回りながら小屋の周りを探したそうなんですが、とうとう分からない。

どこへ行ったもんなのか、何処へ消えたもんなのか….
仕方なしにまた小屋の中に戻ってきた。

なんだろう、おかしいぞ、何処へ行ったんだろう….って思いながらも高橋さんは夕食を始めた。
夕食を始めながらふっと考えた。

あの暗闇の中、灯りを持っていたらすぐに分かるんですが、あの女、灯りを持っていなかったよな…?
ましてやこんな荒れた気候の中、こんな時間に….。
女が一人で山に上がってくるか?



普通グループであがってきた場合は男の方が入り口を聞くそうなんですよ。
入り口は何処ですか?方角はこれで大丈夫ですか?とか。
でも女には仲間は居ないらしい。

どう考えても女が一人でこの時間にあがってきて、それで声をかけたに違いない。
でも何処へ行ったか分からない。

こんなおかしな話は普通無いわけで、
あいつどんな女なんだろうなぁ?と思った時、ふっと高橋さんはあることに気づいた。
その瞬間に寒気がした。

違う、あの女は生きている女じゃないんだ!
その瞬間、ゾクッと寒気がしたって言うんです。

外は真っ暗。
小屋の中も真っ暗。

蝋燭の灯りが一本で、カンテラの灯りと蝋燭の灯りの中で、妙に寒気がしたって言ってましたよ。
3日ほどしてね、仲間が山に登ってきたんで、その話をすると

あぁそうか…あんたが来る前なんだけどな、この先の崖から若い登山客が落っこちて死んでるんだよ。
多分その女じゃないかな….
って言われたって言うんですよね。

そして夏も過ぎた頃、女性が三人花束を持って上がってきた。
聞いてみると、その足場から落ちた方のお母さんとその方の友人という人が二人。

その話を聞いたもんですから、高橋さんが実はね、こんなことがあったんですよ…
って自分が体験した話しを話しましたら、そのお母さんっていう人が

あぁそれはうちの娘に違いありません…
私がなかなかこうして顔を出さないものだから、寂しくてきっとあなたのところへ顔を出したんでしょうね。

って言ったって言うんですよね。
山にはそういう魂や霊が時々顔を出したりするんでしょうね…


 
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出典元:鳥取の山小屋
https://fumibako.com/kowai/story/ingw/56.html

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