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鷹ノ巣山避難小屋

鷹ノ巣山避難小屋

雲取登山で、下山時に縦走する予定だった奥多摩最長の尾根「石尾根」。
この時は、メンバーの体調不良もあって断念し、以来石尾根縦走はどうしても踏破しなければならないコースのひとつとなっていました。

大キレット縦走を天候不順のため石尾根に変更した後、さらに笠ヶ岳山行に変わってしまったのは述べたとおり。

笠新道の下りでなった膝の筋肉痛も癒えた8月5日、どうせ明日は予定ないし、石尾根を歩いてみるか!と思い立って、何人かに声をかけたものの、応募者はなし。

まぁ、奥多摩だし、ソロで歩くのもいいか!と思い、8月6日-7日、石尾根縦走を計画しました。

ところが、前日の夜、ビールを飲んでたらいい気分になって、パッキングもしないまま寝てしまいました。

起きたのは当日朝5時半。

(う~ん、どうしようかな・・・)と蒲団の中で悩むこと10分。

天気も良さそうだし、どうせやることもないし、山に行ってこよう!と決めるや、30分でテント泊装備のパッキングを済ませ、顔を洗っておうちを出、豊田の駅前で食糧を買い、朝マックしてから、青梅線に乗り込みました。

JR奥多摩駅着は08:49。

駅の脇の登山ポストで登山届を記入し、準備体操をして、09:00いざ出発。

この時点で、当初の計画から1時間押し。
この遅れがのちの不思議体験の芽となります。



氷川大橋を越え(ちなみに、この下に氷川小橋と言う吊り橋があり、翌日ここを通って河原に出ます)、奥多摩むかし道の入り口を左手に見ながら、アスファルトの林道を歩くこと約40分。

あれぇ・・・道に迷ったかな?と思いつつ歩いていると、ようやく「石尾根縦走路・六ツ石山」と書かれた看板発見。
後を一人でついてきた白人のおっちゃんは、そのまままっすぐ行ってしまったけど、どこ行くんかしら。

それにしても、暑い!ここまでですでに汗だくです。後から調べたら、この日の気温は都心で38度。今年の夏一番の猛暑日だとか。
こまめに水分補給しますが、どうも体が重くて調子がでません。

縦走路を歩きはじめるとすぐ、集落があったと思われる地点を通過。

そのあとは、平坦な道と、だらだら続く登りとが交互に出てきます。

暑さのせいか、ペースも上がらず、やたらと水ばかり飲みながら、なんとか六ツ石への登りに到着。ここまで三回休憩を入れています。

ここから標高差は約200m。この程度の登りなら、普段は40分ほどでとっとこ登れる感じなのですが、この日に限って、三回ぐらい立ち止まり、休みを入れながら一時間以上かかって、六ツ石への分岐に到着。

分岐から5分ほど登ったところにある六ツ石山山頂では、山頂標識の改修工事が行われていました。

分岐に戻ってくると、65歳前後の登山者と会いました。聞けば、棒ノ折から長沢背稜を縦走して雲取を越え、ここまで歩いてきたとのこと。ひとしきり登山談議に花が咲き、思わず長居してしまいました。

このへんまで来ると、雲取方面から歩いてくる登山者と会うようになります。そのうち3人に一人はトレイルランナー。
この辺り、道はとても整備されてて歩きやすく、トレイルランニングには最適。
六ツ石山から鷹ノ巣山へは、巻き道を通れば基本平坦でとても歩きやすい森の散歩道が続きます。

この辺りで体調も回復し、ペースも上がってきたものの、前半の遅れはいかんともしがたく、今日中に鷹ノ巣山を越えて七ツ石小屋までたどり着くのは、今の時間と体調では難しそうと判断し、今日の宿泊地を、当初予定していた有人の七ツ石小屋から、無人の鷹ノ巣山避難小屋へと変更することにしました。
この変更のせいで、恐怖の一夜を迎えるはめになろうとは、この時は思いもせず、ただ「ビールが飲めないのはつらいなー」程度にしか思っていませんでした。

平坦で美しく、しかし延々と続く鷹ノ巣山への道を、ただひたすら淡々・黙々と歩きながら、将門馬場をすぎ(実際にはコースから外れてて見えない)、水根山をかすめ、鷹ノ巣山を巻いて15:40ようやく鷹ノ巣山避難小屋につきました。

この避難小屋は、高原のロッジを思わせるほど瀟洒な、林の中にたたずむきれいな小屋。

ガラガラと、扉を開けて入ってみると、一人で泊まるには大きすぎる立派な小屋でした。



まずは水汲み。
200mほど下にある水場まで水を汲みに行かねばなりません。
この水が、とってもおいしい。
明日の行動分も合わせ、2.5L分を水筒に入れ、小屋に戻ると、あとは晩飯を作るまで特にやることもなし。

まずはコーヒーを入れて一服。夕食を作るにはちと早いので、こんなこともあろうかと持ってきた単行本を読んで時間をつぶします。
暑くもなく、寒くもなく、辺りはシーンとして耳が痛くなるような静寂。
夏の夕方の木漏れ日がとっても気持ち良く、鹿の親子が近くを横切って行きます。
(あ~来てよかったー)としみじみと思います。

17時半になったので、夕食(いつものアルファ米とフリーズドライのカレー&焼き鳥の缶詰)にし、その後も暗くなるまで外のベンチで本を読みつつ、ウィスキーをなめる。至福のひと時ですな。

19時過ぎには暗くなったので、避難小屋に入り、寝袋を広げ、ランタンで明かりを摂りつつ、読書続行。

とはいえ、一人で泊まる避難小屋はやっぱり不気味と言えば不気味なので、iPhoneで音楽を聴きながら。

異変はそのあと起こりました。

21:30、うとうととしかかっていたところ、突然「がらがらがら」と、避難小屋の扉が開くではありませんか!

心臓が口から飛び出そうになるほどびっくり!

外から現れたのは…オーバーナイトトレイルしている二人組の男性でした。

「これから雲取山目指すのですが、ちょっと休憩させてもらうので外がうるさいと思いますが、よろしくお願いします」ということでした。

あ”ーびっくりした。

でも、生きた人間だったので、まだよかったです。

外のベンチで二人が会話したりしているのを聞きながら、「あの二人がいるうちに、寝ちまおう…」と思うのですが、なかなか寝れません。

30分ほどすると、外の二人はクマ鈴を鳴らしながら、去って行ったようです。

それから二時間ほどしてのこと。

「ガサガサ」「ゴソゴソ」。

ビニールシートか、ビニール袋を畳むような音がします。

しばらく耳を澄ましていると、「カンカン」「カシャカシャ」と、アルミ製のマグカップや缶ジュースの缶が触れ合うような音も交じっています。

(さっきの二人組が残して行ったゴミを、鹿がいたずらしているのかな?)とも思いましたが、いつまでも音は消えません。

心臓はドキドキバクバク、(あー、どうしてこんなとこ泊まっちゃったんだろう?)などと後悔しつつ、ずっと耳を済ませていると、先ほどの音は鳴ったり、やんだりを繰り返しています。

どう考えても動物の仕業だと思うのですが、万々が一、物の怪のたぐいだったとしたら…と考えると、怖くて怖くて寝れません。

その後も二時間ほど、「ガサゴソ」「カンカン」の音が断続的に聞こえてきます。

あんまり怖いと、怖さを通り越えてだんだん腹が立ってきます。

意を決してヘッドランプを片手にシュラフを抜けだし、扉を開けて「お前らうるさいぞ!」と怒鳴りました。



・・・が、あたりには白い霧が立ち込め、何も見えません。

ビニール袋も、アルミのカップも、どこにもありません。

(そうかそうか、これが○×△?%#$ってやつなのね)。

そう、はっきり認識した瞬間です。

そのあとは、まんじりともせず、夜が明けるのを待ちました。

いつのまにか寝てしまったようで、気がつくと、小屋の外がぼんやりと明るくなっています。
夜が明けたようです。

05:30起床して朝食を食べ、小屋のまわりを調べましたが、昨日とまったく変わったところはありません。

速攻で身支度を整え、パッキングを済まし、空身で鷹ノ巣山をピストン。
小屋に戻り、07:30七つ石小屋を目指して出発。

基本的に平坦で歩きやすいきれいな道をとことこ進み、09:00コースタイム通り、七ツ石小屋到着。

コーラを買うついでに、小屋番さんに昨日の不思議体験を話すと、そのお友達の方が「おれもあそこの小屋に雨の夜女子二人と泊まった時、その女子たちが「男の人の声がする」って言ってたんだよねぇ。」といっていました。
やっぱり、あの小屋なんかありそうです。

そのあとは、何度も通った鴨沢への下山路をてくてく歩き、2時間ほどで鴨沢到着。

バスまで40分ほどあったので、「こもれび」で生ビールを一杯。

奥多摩駅前に着いたところで、天ぷらそばとビールを注文。
食後は日原川に下りて川の中を歩いたりして涼んでから、おうちに帰りました。

・・・しかしあの体験は何だったのでしょう。


 
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【出典元】山の不思議なお話
https://www.tfm.co.jp/forest/

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