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避難小屋の女性

避難小屋の女性

小学校低学年の時の担任の先生はクラスのみんなと仲が良く、昼休みになると一緒にサッカーをしたり鬼ごっこをしたりしていた。

 

 私は放課後児童会に入っていた、それは仕事の関係で家に親がいない子供を延滞して預かってくれるところで、先生とは色んな話をしたり、お絵描きしたり、積み木で遊んだりもした。この話はその時に聞いた話だ。

 

 先生がまだ大学生の頃、先生の友達と一緒に登山に出かけた。その山は標高もかなり高く、行方不明者も多く出ており、かなり重装備で行かなければいけない危険な山だった。

 

 時期は冬、登り始めは快調だったのだが、かなり登ってきたところで突然の吹雪に合い、一旦、避難小屋に避難することにしたそうだ。

 

 その避難小屋はあまり管理が行き届いておらず、時折、小さな隙間から冷たい空気が流れ込んだ。

 

 その避難小屋には先生と友達の他に入口付近の壁で三角座りをしている女性が一人だけだった。

 

 先生は小声で友達とこう話したそうだ。

 


 「あの女の人、若いように見えるけどもしかしたら幽霊じゃないかな。」

 

 友達は、

 

 「じゃあ声掛けてみるしかないじゃん。」

 そう言って、友達がその女の人に声をかけた。すると女の人は小さい声で返事をし、少し頷くだけ。でも、至って普通の女性で幽霊でもなかった。

 

 先生と友達と女性はそこで夜を越すことになった。女性は自分の食料を食べているようだったので、友達と二人で暖炉を囲み食事をとり、すぐに睡眠に入った。

 

 朝起きると、女性は寝ていたので一応声をかけ、体調を確認した。もし低体温症にでもなっていたら生命が危険だからだ。

 そして先生と友達は避難小屋を後にした。まる一日かかって山頂まで辿り着いた。山頂で夜を越すことになれば命に関わる寒さだったので、あの避難小屋を目指したが、もう日が暮れるので山頂から少し降りたところでテントを張って夜を越した。

 

 早朝、目を覚ますと、その日は天気が悪く、ラジオの天気予報ではもうすぐ吹雪になる予報だった。一気に下山するのは危険だと判断したため、とりあえず避難小屋を目指すことにした。そこならテントよりかは暖をとることができる。

 

 しばらく下山し、避難小屋についた。誰もおらず、暖をとり、歌を唄った。すると、そこへ人が入ってきた、それは2日前から居た女性だった。

 

 その時から先生と友達は女性のことを怪しく思っていたらしい。



 

 入ってくると直ぐに、その女性は入口付近で三角座りをした。友達が温めておいた飲み物を差し出すと、少し笑顔で受け取ってくれた。

 

 しばらく経っても吹雪は止まないので女性に話しかけることにした。小さい声だったが、しっかり返答はしてくれた、仕事や、住んでいるところ、仕事で出会った人と結婚し、新婚だったことも教えてくれた。

 友達は旦那さんはいらっしゃらないんですか?と聞くと、急に女性は黙り込んだ。

 

 先生も友達も色々質問しすぎて、機嫌を損ねてしまったのだ、そう反省した。

 

 次の日の朝、昨日は夜遅くまで話し込んでいたので、起きるのが遅くなった。女性はもう先に小屋から出ているようだった。外は猛吹雪にも関わらず、命に危険が及ばないか少し心配になった。

 

 友達はラジオを取り出し、天気予報を聞いた。今日の深夜から吹雪は止むらしい。なので今日も小屋に泊まり、明日の早朝に下山することになった。

 

 日が暮れる前、また小屋に人が入ってきた、まだ外は猛烈な吹雪だった。

 

 なんと入ってきたのはあの女性だった。

 

 さすがにこの時から二人ともおかしいと思い、二人で話し合った末、明日は女性の後をつけてから帰ることにした。おかしい行動の理由を探りたかったのだ。

 

 夜は一言も話すこともなく、睡眠に入った。予報通り、吹雪は弱くなってきていた。

 

 次の日、友達は先に起きて、暖をとっていた。念の為、食料は残しつつも朝食をとり、女性が小屋を出るのを待った。

 

 二人が変な雰囲気を出すと勘づかれると思ったので、適当な話をしながら待った。

 

 女性が起きてから、数十分も経たないうちに女性は小屋から出た。

 

 友達と先生も息を殺して、女性のあとをつける。

 

 女性は少し山道を進むと、道から外れていき、崖を降り始めた。

 

 「おい、なかなか危ないぞあの崖。もしかして、登山のアスリートか?」

 

 友達が茶化し半分でそんなことを言いつつも、女性が見えなくなってから崖の下を覗き込んだ。

 

 すると、思いもよらない光景があったという。

 

 



 

 

 なんと崖の下では、女性が誰かを食べてるようだった。あまりの衝撃的な光景に二人は固まった。よく見ると凍りついている男性のお腹のものを口に入れているようだった。

 

 我に返った二人は一目散で下山し、警察に通報した。

 

 しばらくして、事件の真相が明らかになった。

 

 崖の下で亡くなっていた男は、あの女性の旦那さんで、登山をしている途中に崖から転落死してしまい、パニックになった女性はどうして良いかわからず、男性を食べていたとのことだった。

 

 そして女性の荷物の中には男性の骨や、肉が入ってたという。

 

 小屋の中で食べていた食料も男性の肉片だったのかもしれない。


 
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出典元:先生の話
http://sakebigoe.com/stories/190225010543483/3

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